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| 「つまり……メイド服を着れと?」 「他に何がある。目の前に渡されたメイド服があって、ここには里美しかいない」 「い、いやだよ。なんで女の子の制服を着なくちゃいけないの?」 当然だろう。 里美は、女の子と見違えるくらいの可愛い顔をしていて、ズボンを履いて男の子のヘアスタイルをしていても、女の子と間違えられる。だからと言ってメイド服を着てバイトする理由にはならないだろう。 「文句があるならママに言え。言い出しっぺはママなんだから」 と言われて、母親のほうに目を向ける里美。 すると……。 「里美ちゃん、ママのお願いよ。ユニフォームを着てくれないかしら」 手を合わせて拝むようにしてお願いポーズをとる母親だった。 「なんで僕が女の子の格好しなくちゃいけないの? 女の子みたいな顔していてもれっきとした男の子なんだからね」 自分でも女の子みたいな顔であることを自覚している里美だったが、だからといってメイド服を着て人前に出ることなどできるわけがなかった。 「そんなこと言わないで。もし、お願いを聞いてくれたら、お小遣いを増やしてあげちゃう!」 里美が拒絶することは考慮に入っていたらしく、二の矢を放ってくる母親だった。 バイト料を払ってくれる上に、小遣いの増額。 つい触手が動いてしまいそうになるのをこらえる里美だった。 そもそも、この母親が里美にメイド服を着てほしいとこだわるのにはわけがあった。 女の子が欲しかった。 その一言につきる。 里美を妊娠したとき、ぜひとも女の子でありますようにと胎教にも取り組んだ。 しかし生まれてきたのは男の子だった。 あきらめ切れず【里美】という女の子みたいな名前をつけて、あまつさえ幼児期の玩具には人形を買い与えていた。 そんな母親の切ない願いを神が聞き入れたのかどうか……。 里美は女の子みたいに可愛く育ってしまったというわけである。 「ママ! そんなに甘やかしてどうするのよ。家業を手伝うのは子供の義務じゃない。ただ飯食わしてやってるんだ。そこまでする必要はないだろう」 「でも、この場合は特別だから……」 そりゃそうだろう。 男の子に女の子の格好させるのだから、慰謝料的な意味合いを込めて小遣いの増額をするのは当然と言えた。 「で、里美はどうする? バイト料と小遣いの増額だぞ」 仁美が、里美に決断を迫った。 さあ! どうする里美。 バイト料と小遣い増額が目の前にぶら下がっているのだ。 ちょこっとメイド服を着るだけじゃないか。 どうする! どうする! |
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