美奈の生活 for adlut episode-1
【再び夜となる】
あれからデパートへ行って、目の保養を十分なくらい満喫してから、帰りがけにスーパーで夕食用の食材、そして後学のために婦人雑誌を買って帰った。
夕食をこしらえて夫の俊介の帰りを待つ時間となる。
美奈だったらTVのアニメとかを見ているだろうが、今は主婦としての知識を得るほうが先決だ。
というわけで、昼間に買っておいた、婦人雑誌を読むことにする。
毎度おなじみともいうべき芸能記事は適当に読み飛ばして、家庭欄を重点的に攻めていくことにする。
【季節の変わり目のお化粧の心得】
【今巷で流行のファッションの傾向と対策】
【マンネリ化しないための夫婦生活】
今の加奈子にとって、どうしても習得しておかなければならないのが化粧術である。
デパート歩きをしている時に気がついた。
大人の女性は化粧をするものである。
……と。
加奈子はすっぴんだった。
化粧をしないで出歩くことは、裸でいることと同じなのである。
痛感させられた。
ファッションも、大人として主婦として、それなりにふさわしい着こなし方があるはずである。
そして肝心かなめの夜の生活のABC。
ふう……。
ため息、しきりの加奈子だった。
つい昨日まで中学生していたのだ、一日や二日で大人の世界のことを理解できるものではなかった。
一度にすべてを覚えようとするのは無理がある。
地道にこつこつと積み上げるしかない。
玄関のチャイムが鳴った。
と続いて扉の鍵が開けられる音。
そして、
「おーい。今、帰ったぞ」
と俊介の声。
パタパタとスリッパの音を鳴らして急いで玄関に迎えに出る加奈子。
「お帰りなさい」
俊介の背後に回って、背広を脱ぐのを手伝う加奈子。
それをハンガーに通してそばのハンガーラックに吊るす。
「おお、廊下がきれいになっているな。さすがは主婦のなせる技だな」
「もう……。あなたがだらしないだけです。人目につく廊下ぐらいは掃除機を掛けて欲しかったです」
腰に手をあてて憤慨したように装う加奈子。
「悪い悪い。そうは思ったのだが……」
「思っていたのなら、やってくださったらいいのに」
「あはは……」
頭を書きながら平謝りの俊介だった。
「さて……食事になさいますか、それとも先にお風呂に入りますか」
かつての加奈子と俊介が交わしていたいつもの夫婦の会話になっていた。
郷に入れば郷に従え。
加奈子は美奈であることを忘れようと努力していた。
妻の加奈子として生きるために。
「そうだな、先に風呂にしようか……。加奈子も一緒に入りなさい」
「え? わたしもですか?」
「そうだ」
「わかりました。先に入っていてください。後で参ります」
「うん。それじゃな」
先に俊介を入らせるのは、風呂上りに着るバスローブとかの用意があるからである。
夫婦で一緒に入るとなると、風呂に入るだけで済まないとは、創造だに難しくない。
しかもすでに裸同士であるから、即戦状態となることが予想される。
入室までに、十分な受け入れ態勢を整えておく必要があった。
俊介が脱いだ衣類を丁寧にたたみ、その上に衣類を脱いで重ねていく。
俊介に抱かれているシーンを思い浮かべながら、意識を女性の秘部に集中する。
少し濡れてきたところで、おもむろに俊介の待つバスの中へと入っていく。
つづく
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